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中の人のIYHにいたる顛末と購入レビュー。ときどき自宅システム構築備忘録。

USBのおべんきょう(その4:最近(2020/03時点)の疑問点についてまとめてみた。USB3.1とか3.2とかGen2とかPDとか。)

 以前に自分のお勉強のためにUSBの規格書を元にUSBにまつわるいろんな事を書きましたが、

2年経って改めて見ると、ところどころ追加したほうが良いこともわかりましたので

その4として追加分をまとめてみました。

 

 

 

以前に書いた記事はコチラ。

makoro.hatenablog.jp

makoro.hatenablog.jp

makoro.hatenablog.jp

 

●おことわり

自分の備忘録として記載しているため、エビデンスを可能な限り出せるように

公式のSpecificationを中心に記載するが、 内容の正確性については保証はしない。正確性が必要な場合、各々公式Documentを参照されたし。

また今回参照している資料は

Universal Serial Bus 3.2 Specification September 22, 2017」

「Type-C Cable and Connector Specification Release2.0 August 2019 」

USB3.1/USB Type-C Desktop front panel cable and connector implenetation document Revision1.1 Jun 14 2017」

Universal Serial Bus 4 (USB4)Specification Version 1.0 August 2019」

Universal Serial Bus Power Delivery Specification Revision3.0 version2.0 29 August 2019」

 

である。

 

 

USB3.0と3.1と3.2(Gen1)の違いは?

どれも「USB SuperSpeed」として「5Gbps」の速度をサポートする。

なお、USB3.2 Specification DocumentはそのHistoryから分かる通り、

USB3.0USB3.1→USB3.2とリビジョンを重ねており、

以下の記事にも記載があるが、基本的な機能は全く同一の模様

USB 3.2とUSB4は従来のUSB規格から何が変わるのか? 混乱しがちなUSBの最新事情を説明しよう - 4Gamer.net

USB 3.0/3.1/3.2の違い—速度・形状・4つの注意点を簡単にまとめたよ!|8vivid

 

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より厳密な言い方をすると、

USB3.0:5Gbpsの転送速度をサポート

USB3.1:5Gbpsの転送速度に加え、Gen2(Generation 2)として10Gbpsの仕様を新たに策定

USB3.2:5Gbps/10Gbpsの転送速度に加え、Gen2x2として、20Gbps(10Gbps x2)の仕様を新たに策定

という差となる。

上記URLには5Gbpsなら3.0、10Gbpsなら3.1、20Gbpsなら3.2という記載があるが、

USB 3.2 SpecificationにはUSB3.2 Gen1/USB3.2 Gen2/USB3.2 Gen2x2と記載されているため

すべて名称としては3.2に統一されている。よって本記事では以降もこのように表記する。

 

また、USB3.2 Gen2x2の登場に伴い、以下のような「GenAxB」表記も行われる。

A:1(5Gbps)、2(10Gbps)

B:1(1Lane)、2(2Lane) ※Dual-Lane Operation(後述)が有効の場合は2となる

よって

USB3.2 Gen1=USB3.2 Gen1x1

USB3.2 Gen2=USB3.2 Gen2x1

となる。

なお、USB3.2 Gen1x1意外は「Superspeed Plus」という名称が与えられている。

仕様中にもある通り、「Gen1x2」というものも存在しており、この場合5Gbpsx2レーンの転送速度となる。

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●USB3.2 Gen2(10Gbps)について

Gen2にはGen2x1の10Gbpsの転送速度を持つものと、2つの伝送路を束ねて増速するGen2x2(20Gbps)がある。

データエンコーディングに関しては、Gen1が8b/10bエンコーディング、Gen2が128b/132bエンコーディングとなり、速度向上以外にも効率化も図られている点が特徴。

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●USB3.2 GenAx2について

USB3.2はGenAxBのそれぞれに対応して、利用できるプラグ/レセプタクルが規定されている。

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ここで注目すべきなのは、GenAxBにおいて

Aの値が1/2のどちらの場合でも(5Gbps/10Gbps双方)においても、従来どおりのUSB3.1 Standard/Microコネクタ(3.0~3.2コネクタ)が利用可能

・Bが値が1の場合(1レーン)は従来どおりのUSB3.1 Standard/Microコネクタ(3.0~3.2コネクタ)が利用可能

・Bの値が2の場合(2レーン)の場合はUSB3.2 Type-Cしか利用できない

 という特徴がある。なおここで言われているUSB3.2 Type-Cケーブルについては所謂

「Full-Featured Cable」

であると思われる。

 

纏めると

5Gbpsx2レーンおよび10Gbpsx2レーンのUSB3.2接続はType-Cでしか実現できない

ということである。Type-Cは今後より重要になっていくというか、このタイミングでコネクタの互換性は完全にない状態(旧コネクタ規格の切り捨て)であり、現状最速の転送規格であるUSB3.2 Gen2x2(20Gbps)に関しては既存のStandard/Micro-A/Bとの互換性はない。

PCIバスがISEバスの互換性を捨てたように、

PCI ExpressPCIバスの互換性を捨てたように、

USB3.2 Gen2x2もStandard/Micro-A/Bコネクタとの決別を図って新たな時代へと進む。

 

●Dual-Lane Operation

 前述している通り、USB3.2では新たにType-Cに備わる2つのレーンを束ねて使い、

最大10Gbps(Gen1x2)/20Gbps(Gen2x2)を実現するモードが規定されている。

これをDual-Lane Operationと呼ぶようだ。

利用する場合当然ではあるが、DFP/UFP双方のポートがDual-Lane Operataionに対応している必要がある。

Table7-14にポートの組み合わせとリンクモードの対応が記載されている。

Type-Cポートは接続時にネゴシエートを行うが、その中でPHY Capabilityとして自身の対応状況を通知している。通知は基本的に一番早いものが通知されるようだ。

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なお、通知したPHY CapabilityにはFallbackする機能があり、Fallbackする順序も規定がある。

Gen2x2を通知したポートの場合、Fallbackする場合はGen2x1となる。

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●Dual-Lane Operation時におけるDisplayport Altについて

これについてはよくわからないが、Type-C Cable and Connector Specification R2.0を見ると、マルチプレクサを介して接続しているため、同時のやり取りが可能そうに見える。

 

まず、前回の調査時に調査が漏れていた、Alt Modeで利用できるピン配置は以下の通りである。(黄色の箇所がAlt Modeで利用されるピン)

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なお、Dock、Captive Cable、Detachable Notebookの接続に利用されているType-Cコネクタは更に追加のピンが利用可能になる。

Captive Cableは

3.4.3 USB Type-C Captive Cable Assemblies
A captive cable assembly is a cable assembly that is terminated on one end with a USB Type-
C plug and has a vendor-specific connect means (hardwired or custom detachable) on the
opposite end. The cable assembly that is hardwired is not detachable from the device.

とあるので、「Type-Cプラグ⇔専用デバイス(専用ドック、専用ケーブル、ノートPC脱着機構(ディスプレイが脱着できるタイプの2in1PCを想定?)に利用されるType-Cコネクタ)の場合に利用が可能なピン、と理解した。

 

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本題のType-C Alt時のUSBとの併用だが、以下のように規定されている図がある。

マルチプレクサを介し、Alt Mode PHYとUSB PHYが2つのSSTX/RX(USB3.2の通信経路)を共用している。

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また、以下のVESAの資料スライド36にUSB4.0ではあるが、DP AltとUSB Gen2x2(とPCIe)が同時に伝送可能であることが推察できる資料が存在する

https://www.usb.org/sites/default/files/D2T1-4%20-%20VESA%20DP%20Alt%20Mode%20over%20USB%20Type-C.pdf

 

 なお、このVESA資料のスライド23に「Direct Connect Applications」相当でType-Cを利用し、Displayport信号を4レーン分伝送することが可能な模様。

また、MSTについても当然サポートしているようで、以下のようなアダプタが存在する。

www.sanwa.co.jp

  

●USB3.2 Gen2(10Gbps)/Type-C用マザーボード用コネクタについて

以下にあるように4種類のコネクタ(ピンヘッダ)が存在する。

USB3.0/3.1世代から利用されてきた19ピン ピンヘッダ

USB3.1以降のKey-Aレセプタクル

USB3.1以降のKey-Bセレプタクル

USB3.1以降の40ピンレセプタクル

 

USB3.0/3.1世代から利用されてきた19ピン ピンヘッダ

USB3.0マザーボードに搭載されるようになってから利用されている、2x10ピン(うち1ピンはKeyとして塞がれている)コネクタ。青色である場合が多い。

Type-A x2ポートが利用可能。また10Gbpsにも対応している製品が存在している。

SilverStone USB3.1増設カード 内部19ピン接続 SST-ECU04-E

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  • 発売日: 2018/08/01
  • メディア: 付属品
 

 

USB3.1以降のKey-Aレセプタクル

USB3.1/USB Type-C Desktop front panel cable and connector implenetation document」にて規定されている高密度コネクタ。

Section.2に記載のある以下の通り、

The receptacle connector mounted on motherboard (MB) is referred to as the header. To provide configuration flexibility of the USB ports on the front panel, this document defines a 20-pin and a 40-pin header. The 20-pin header has two keying options. The 20-pin header with Key-A supports 1 USB Type-C port or 1 Standard-A port. The 20-pin header with Key-B supports 2 Standard-A ports.

Type-C x1またはType-Ax1ポートが利用可能。コネクタ仕様はシールドの有無により2種規定がある。

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Type-Cレセプタクルとの対応は以下通り。

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USB3.1以降のKey-Bレセプタクル

USB3.1/USB Type-C Desktop front panel cable and connector implenetation document」にて規定されている高密度コネクタ。

Section.2に記載のある以下の通り、

The receptacle connector mounted on motherboard (MB) is referred to as the header. To provide configuration flexibility of the USB ports on the front panel, this document defines a 20-pin and a 40-pin header. The 20-pin header has two keying options. The 20-pin header with Key-A supports 1 USB Type-C port or 1 Standard-A port. The 20-pin header with Key-B supports 2 Standard-A ports.

Type-Ax2ポートが利用可能。こちらもシールドの有無により2種規定がある。

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・40ピンレセプタクル

USB3.1/USB Type-C Desktop front panel cable and connector implenetation document」にて規定されている高密度コネクタ。

The 40-pin header/plug is a simple extension of the 20-pin header/plug with the only difference being the pin count.

とある通り、20ピンレセプタクルを延長したものとなっており、Type-Cが2ポート取り出し可能である。

40ピンレセプタクルについても、シールドの有無により2種の規定がある。

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Type-Cレセプタクルとの対応付は以下の通り。

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●USB4.0について

「USB4」発表、転送速度はUSB 3.2の2倍40Gbps。Thunderbolt 3ベースに - Engadget 日本版

新規格「USB4」発表。何がどう変わるか、今知っておくべきこと | ギズモード・ジャパン

Thunderbolt 3が「USB4」として登場へ - PC Watch 

 

次世代USB「USB4」ではDisplayPort出力対応が“必須要件” ~DisplayPort 2.0はThunderbolt 3並の速度へ - PC Watch

 USB4.0はThunderbolt3のプロトコルをベースにし、

・USB・DisplayPort/PCI Expressをトンネリング

・最大40Gbpsの転送をサポート

・Type-Cの利用が前提

となっている模様。詳細はまた後日別記事として纏める予定。

 

●Type-C PD(Power Delivery)対応ポートで5V/2.4Aの出力について

 Amazonを含め、市場を探すと、「5Vの出力が2.4Aまで」の製品がそれなりの数で見つかる。

下記の製品では 

 「5V=2.4A / 9V=3A / 15V=2A / 20V=1.5A」というような出力となっている。

Type-C PCの規格では、上記のような出力構成は厳密に言えば規格違反である。

Type-C PD Specification Rev3.0 ver2.0では9V以上の出力を持つPD給電デバイス

5Vの電流は3Aであることが必要な要件となるため、上記のデバイスはその要件を見対していない。

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なお、PDOを厳密にチェックするデバイスではネゴシエートに失敗する場合もあるようで、Type-Cの互換性を重視するのであれば「9V以上の電圧をサポートするアダプタで5Vの出力が3Aでないもの」に関しては、選択しないほうが無難であろう。

 

 

●Type-C PDのPower Rule以外の電圧(12V/18V等)について

Type-C PD Specification Rev3.0 ver2.0では、5/9/15/20VはPower Ruleで規定される必須サポート電圧(出力に応じて必要な電圧の組み合わせは可変)であるが、これらの電圧以外にも電圧を独自にサポートすることも可能である。

10.2.3.1 Optional Normative Fixed, Variable and Battery Supply
In addition to the voltages and currents specified in Section 10.2.2, a Source that is optimized for use with a specific Sink or a specific class of Sinks May Optionally supply additional voltages and increased currents. See Section 10.2 for the rules that Shall apply to Optional PDOs in order to be consistent with the declared PDP Rating and the Normative voltages and currents. 

とあるように、Optional PDOとしてサポート可能である。HPのType-C ACアダプタは12Vで5A、15Vで4.33Aという組み合わせを出力可能であるが、5V-3A、9V-3A、および15V-3Aを出力可能なことから(20V-3.25Aも出力可能だがこれはPower Rule内の出力)、

PD規格には違反していないという判断になる(Option出力をサポートしたPDアダプタ)

 

なお、12VはType-C PD1.0のPower Configurationには含まれていたが、Revision2.0より要件から外れたため、Option扱いの電圧となる。

 

USB PDの技術 〜安全と利便性を実現する技術〜 | ルネサス エレクトロニクス

なお、PD Rev3.0でサポートするコネクタはType-Cのみとなったようである。

 

●Type-C PDポートでのQuickCharge対応について

Type-C Cablea and Connector Specificationでは、Type-CコネクタではUSB規格で規定された電力ネゴシエートのみと規定している。

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なお、この記載がある4.8には

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と記載があり、「requrements and recomendations」の表現がある。

Type-Cがサポートすべきリストに4.8.2がないことから、mustなのではなく、recommendationなのかもしれない。

 

●Type-C PD PPSとは?

 Type-C PD Rev3.0 ver2.0の用語説明には以下のように記載がある。

Programmable Power Supply (PPS)

A power supply whose output voltage can be programmatically adjusted in small increments over its advertised range. The PPS also has a programmable output current fold back. The capabilities of the PPS are exposed by the Programmable Power Supply APDO (see Section 6.4.1.2.5).

指定された電圧内で、出力電圧をプログラマブルに変更可能な機能である。

変更可能な電圧幅は以下の通りである。

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 PDOにもPPS用のフィールドが含まれ、SourceからSinkに情報通知が行われる。

第937回:PPS(Programmable Power Supply)とは - ケータイ Watch

 

また、この仕組を応用したのがQuickCharge4.0とのこと。

Fast Charging Technology | Quick Charge 4, 3.0 and 2.0 Devices | Qualcomm

第812回:Quick Charge 4/Quick Charge 4+とは - ケータイ Watch

【山田祥平のRe:config.sys】QuickChargeがUSB Power Deliveryを包み込む将来 - PC Watch

 

●まとめ

USBは3.2になり、これまで以上の速度向上を果たし、最終的には10Gbpsx2の20Gbpsになった。

 また併せて登場したType-Cのメリットを活かし、Alternative ModeやThunderbolt、Power Deliveryの規格が策定され、単純なシリアルデータ通信に留まらず、映像や給電に関してもその規格/コネクタ内に取り込み、PCIのような”汎用バス”へと変貌を遂げつつある。

USB4.0ではThunderboltを取り込み、増速中心であったUSB3.2から増速・多数のプロトコルを流せるようになっている模様。またType-Cの利用が中心とのこと。

USB3.2 Gen2x2以降は、本格的に旧来のコネクタを捨て、Type-Cの世界になっていくであろう。

 

またQC3.0ではE-Markチップを破壊する可能性があったQuickChargeが、4.0になりPDを取り込んでいる点については評価をしたいが、多様な充電器で多様なデバイス(これはスマートフォンに限らない)を充電することを目指す場合、基本に据えるべきなのはType-C PD規格であることは重要である。