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中の人のIYHにいたる顛末と購入レビュー。ときどき自宅システム構築備忘録。

ANA In-Flight WiFi Service Deep Dive -Part3:ネットワーク編-

 ANASFC修行でANA便に乗りまくることを利用して
なにか面白いGeekなネタは無いかと思い立ち、ふと始めてみるコーナー。
その名も、「ANA In-Flight Wi-Fi Deep Dive」です。
公開されている情報から推測できる数々のネタをつなぎ合わせ、
全5回程度で裏側に迫っていきたいと思います。 

 

第3回はネットワーク編です。

 

makoro.hatenablog.jp

 

 

●おことわり

数回にわたって書くANA WiFi ServiceのDeep Dive記事では、

以下のようなポリシーで調査した内容を記載しています。

ANA公式サイトから得られる情報

・実際の搭乗時に接続した際に得られる情報

・得られた情報から類推できる情報

 

また、記載する内容は2019年時点での内容であり、内容が保証されるものではありません。
公式サイトに記載されている情報以外の内容については、あくまで執筆者(makoro)が調べた結果であり、
ANAの公式発表ではない点にご注意願います。

 

いよいよここから裏側に迫っていきたいと思います。
内容的にはTech Geek向け。完全に誰得情報な気もしますが。。。 

 

makoro.hatenablog.jp

 

 

●使用していると思われる通信衛星

スカパーJSAT通信衛星、Superbird C2が利用されている模様。

https://www.ana.co.jp/group/pr/pdf/20161128-3-1.pdf

上記ANAANA WiFiサービス概要に

※本「ANA SKY LIVE TV」などの国内線「ANA Wi-Fi サービス」 は、Panasonic Avionics Corporation による航空機内
インターネット接続サービス「eXConnect」、および航空機内衛星テレビサービス「eXTV」 を介して提供されます。また「ANA
SKY LIVE TV」などの「ANA Wi-Fi サービス」 は、スカパーJSAT 株式会社が保有する通信衛星を利用しています。

 と、パナソニックアビオニクスのeXConnectを利用していること、

およびスカパーJSAT通信衛星を利用していることが明言されています。

そして、スカパーJSATニュースリリースを探していたところ、2012年のリリースに以下のようなもの発見しました。

●米国 Panasonic Avionics 社における通信衛星スーパーバード C2 の利用について

https://www.skyperfectjsat.space/news/files/pdf/news_sjc_jp_20120801_01.pdf

 

Superbird C2は日本向けアンテナと東南アジア向けアンテナンを装備している模様。

www.jsat.net

日本向けアンテナでは東南アジア向け電波より放射範囲が狭い分、

高利得なアンテナを使っている模様です。

採用バンドはKuバンドKuバンドは大気中の雨の影響を受ける周波数なので

雨雲の下を飛んでいるときは通信状況悪くなることも有り得そうです。

 

おまけ:JALの国内線向けWiFiはJCSAT-5Aのようです。

以下URLに記載がありました。

 

time-space.kddi.com

JALは国内線・国際線それぞれ航空機向けのサービスプロバイダと契約しており、国内線はアメリカのGogo社、国際線ではパナソニックアビオニクス社のシステムを利用している。国内線も国際線も機器は異なるものの、基本的な仕組みは同じらしい。Gogo社によると、衛星は自前のものではなく、日本のスカパーJSAT株式会社と契約し、JCSAT–5Aという衛星を通じてJALの航空機に電波を送っているとのことです。

JCSAT-5AもKuバンドを利用している模様です。

(ちなみにJCSAT-5Aはドコモの衛星通信にも利用されているようです)

www.jsat.net

JCSAT-5はロッキード・マーティン、Superbird C2は三菱電機製のようですね。

 

無線LANのビーコンから読み取れる情報

ANA国内線 機内WiFiでは「ANA-WiFi-Service」というSSIDに接続しますが、
このSSIDは実は複数のAPによって構成されています。
Android等を使い、各APのBSSIDを表示できるアプリでチェックすると、
・2~3台のAP
・周波数帯は2.4GHz/5GHz帯の両方を利用
・BSSIDのOUIから判別できるAPのメーカはHPE Aruba/Aruba Networksの2社※
・すべてのAPのチャネル設定は考慮されている(AP同士で干渉しないチャネルに設定されている)

という感じでした。

f:id:makoro2_0:20190716004919p:plain

(※どっちもHPEのAPで、HP買収前のArubaのOUIなだけなので、実質一社です)

 

APの選定はANAがやっているのかパナソニックアビオニクスがやっているのかは
不明ですが、HPのエンタープライズ向け無線LAN APでした。

 

2-3台設置されているみたいですが、どのあたりに設置されているんだろうか。
プレミアムクラスの上にはありそうですが、
あとは均等に真ん中、後方という感じなんですかねぇ。
露出していないので設置場所については謎です。


B777/B787/A320neo/B737-800等で利用しましたが、私が利用した機材はすべてこの2社でした。


IPアドレス払い出しについて

・各種ネットワーク情報

f:id:makoro2_0:20190716010914p:plain

接続後に確認したところ、以下のような設定で払い出されました。

すべての機体で同じレンジとなるかは確認していませんが、/23での配布だったため

同様の設定にはなっていそうです。

 

IPアドレス:172.19.248.0/23
DNSサフィックス:ana-inflight-wifi.com
DGW/DHCP/DNS:172.16.248.1


DHCPDNSもDGWが兼ねています。
DHCPのリース時間は24時間と長めでした。

客席数とデバイス数を考えると最大値はB773の座席数になると思うので
/23は納得ですね。

A380の機内WiFiだとまた違うんだろうか・・・?


ANA WiFi Serviceの通信経路

・Traceroute

C:\Users\makoro>tracert www.google.co.jp

www.google.co.jp [216.58.197.163] へのルートをトレースしています
経由するホップ数は最大 30 です:

1 4 ms 1 ms 5 ms ns.ana-inflight-wifi.com [172.19.248.1]
2 9 ms 5 ms 2 ms 10.230.XXX.XXX
3 774 ms 717 ms 615 ms 172.18.XXX.XXX
4 731 ms 608 ms 558 ms 172.18.XXX.XXX
5 * * * 要求がタイムアウトしました。
6 575 ms * * 172.29.XXX.XXX
7 591 ms 612 ms 1738 ms 111.108.XXX.XXX
8 772 ms 609 ms 537 ms 27.85.XXX.XXX
9 751 ms 593 ms 630 ms 27.85.XXX.XXX
10 646 ms 612 ms 534 ms 74.125.XXX.XXX
11 * * * 要求がタイムアウトしました。
12 635 ms 2253 ms 913 ms 72.14.XXX.XX
13 727 ms 715 ms 611 ms 108.170.XXX.XXX
14 621 ms 817 ms 541 ms 209.85.XXX.XXX
15 530 ms 737 ms 548 ms 209.85.XXX.XXX
16 895 ms 971 ms 1372 ms 108.170.XXX.XXX
17 2729 ms 1020 ms 828 ms 216.239.XXX.XXX
18 606 ms 590 ms 1127 ms nrt12s02-in-f163.1e100.net [216.58.197.163]

トレースを完了しました。

2ホップ目まではRTT的に機内の機器、
3ホップ目からは一気にRTTが大きくなるので、衛星回線を経由していると判断。


・診断君/割当IP

f:id:makoro2_0:20190716014645p:plain

f:id:makoro2_0:20190716014718p:plain


インターネット側の出口のIPを調べてみると、KDDIが管理している?IPのようです。
使用しているJCSATの衛星を管理しているスカパーJSATは、資本的にはNTTの息がかかっているようなので、ちょっと意外。

JCSATのどの地上局を使って通信しているかまでは流石にわかりませんでした。

通常時は横浜主局だと思うので、災害時でもない限り横浜から地上網に出ていそうな気はしますが。

www.jsat.net

なお、機内側のGWシステムではSquidが利用されている模様です。
キャッシュサーバとしても利用しているのか、相手ホストがダウンしていると
Squidのエラー画面が表示されることもあります。
診断くんの画面でSquidが利用されているのは把握していましたが、
まさかそっち側のエラーが出るとは思わなかったので、ちょっとびっくり。

f:id:makoro2_0:20190716015010p:plain

 

●次回は

無線通信やIPアドレス、経路等が判明したので、次回はより身近なアプリケーション編です。

makoro.hatenablog.jp

 

全日空商事 1/200 747-400D JA8961 完成品 ギア付

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